『報いの街よ、暁に眠れ』

『報いの街よ、暁に眠れ』書影

 今回の通勤電車内読書のご紹介は、マイケル・ハーヴェイ著「報いの街よ、暁に眠れ」(ヴィレッジブックス)
 読む本がなくなって、図書館で予約かけてる本はまだ順番が来ないらしく連絡がないので、いつものように浦安市立図書館中央館で文庫の933の棚を漁って借りたもの。ミステリーというだけで作者も知らず、裏表紙の短い紹介文とかでなんとなく面白そうだという匂いを感じたので選んだ。こういうところが、ネットショッピングでは味わえないリアルな図書館や書店の面白さ。

 さて、本書の舞台はシカゴ。シカゴと言えば、かの有名な暗黒街のボス、アル・カポネが牛耳った街であり、本書のエピグラフには映画『アンタッチャブル』でショーン・コネリーが演じたジェームズ・マローンの以下のような台詞が記されている。

「カポネを捕まえたいのか?
捕まえ方を教えてやる。
奴がナイフを抜いたら、拳銃を抜け。
奴がお前の仲間をひとり病院送りにしたら、
奴の手下をひとり死体安置所に送りこめ。
それがシカゴ流だ……。」

 原著のタイトル “The Chicago Way” は、この台詞から取られているらしい。「目には目を」ってやつだが、直訳ではわからないので、邦題は「報いの街よ、暁に眠れ」となっている。読んだ後に、邦題の意味がよくわかる。

 主人公のマイケル・ケリーは、元警官の私立探偵。彼を元の相棒ギボンズが訪ね、担当した古いレイプ事件の洗い直した依頼した後、そのギボンズが射殺体となって発見されるところから物語が始まる。
 迷宮入りし、いつの間にか記録が消された事件を追ううちに次第に明らかになるレイプ犯の姿、そしてそれがいつの間にか血で血を洗う復讐劇に転じて行く。
 主人公のケリーが抱える複雑な生い立ち、イリアスやアイスキュロスといったギリシャの古典を原語で読むほどの教養が、タフでありながら繊細な、新しい探偵像を作り上げている。
 著者のマイケル・ハーヴェイは、本書がデビュー作とのことだが、これまた次作が楽しみな作家であることは間違いない。☆☆☆☆1/2。

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