『ウィンター・ビート』

 今回の通勤電車内読書は、サラ・パレツキー著「ウィンター・ビート」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。「ミッドナイト・ララバイ」に続くV・I・ウォショースキー シリーズの14作目になる。

 前作で登場した従妹のペトラがアルバイトをしているホットなナイトクラブに様子を見に出かけたヴィクは、ナディアという女性が駐車場で撃たれた現場に遭遇してしまう。

 ナディア殺しの犯人として逮捕されたのが、クラブに客として出入りしていたイラクからの帰還兵チャド・ヴィシュネスキー。チャドは、兵役のトラウマからかクラブでナディアに怒りをぶつける様子が目撃されていたが、逮捕された時は薬物の摂取で意識不明の状態で、その側にナディアを撃つのに使われた銃が転がっていた。

 息子の無罪を真実チャドの父親から、事件の真相を突き止めて欲しいと依頼を受けたヴィクは、渋々ながら調査を開始するのだが、クラブのオーナーのオリンピアや、クラブの舞台に立っていた>ボディ・アーティスト<など一筋縄では行かない女性達から話を聞き出そうとしているうちに、殺人事件の裏側に潜む大きな問題があぶり出されていく。

 相変わらずエネルギッシュに無謀なまでに動き回るヴィクと、彼女をサポートする友人達。
 現代アメリカの抱える社会問題を鋭く抉りながら、登場人物達を生き生きと活写するパレツキーの筆は、還暦を過ぎても衰えることがない。600ページを超える長編でありながら、その長さを感じさせない筆力は、まさに「巨匠」の名にふさわしい(パレツキーは、2011年にMWA(アメリカ探偵作家クラブ)のグランドマスター(巨匠賞)を受賞している)。☆☆☆☆1/2。

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