今回の通勤電車内読書は、浦安市立中央図書館の文庫933棚でみつけたG・M・フォード著「毒魔」(新潮文庫)。
シアトルのバスターミナルで発生した、最近兵器による無差別テロの真相を、ノンフィクション作家のフランク・コーソが追う物語。明らかに9.11以後の作品だ。9.11以前と以後では、アメリカのサスペンス物って明らかに違う。以後の方が妙に内省的になっているのは、仕方のないことなのか。それだけあの事件がアメリカ社会に与えた衝撃は大きかったということだろう。
本書では、CIAやFBIはこぞってイスラム過激派の犯行と睨んで洗い出しに動くのだが、コーソが追うのはそれとは全く違うインド人のグループであり、犯人グループの動機もありがちな設定になっている。しかも、最後の最後に明かされる意外な黒幕。ひねりの効いた落ちに驚かされる。
巻末の解説を読むと、このフランク・コーソが主人公のシリーズは、本作で4作目になるらしい。どうりでメインの登場人物の造形が簡単で、どこか別の所で別の物語があったのだろうなと感じさせる訳だ。もちろん、それでも十分に楽しめるのだが、総評としては☆☆☆。
シリーズの最初が2001年の「憤怒」で3作目の「白骨」が新潮文庫で出ているが、今更手にはいるかな。既に本書ですら楽天市場では入手できないみたいだから、図書館か古書店で地道に探すしかないのか。う~む、「たちあがれ、翻訳ミステリー」!