今回の通勤電車内読書は、アダム・ファウアー著「数学的にありえない(上)(下)」(文春文庫)。
ハリウッド映画のような小説とでも言うのかな、確率論、統計学、物理学、量子力学、医学などの理論にアクションシーンをちりばめながら、ジェットコースター的展開でぐいぐい引っ張る。矢口誠の訳者あとがきにもあるけど、まさに、マイクル・クライトンの小説のようだ。
主人公のアダム・ケインは、大学院で統計学を専攻した数学の天才で、恩師から「レインマン」と呼ばれるほど複雑な計算も暗算で瞬時に答えを出してしまう。
しかし、癲癇の発作に苦しみ、ポーカーで大負けしてロシア人マフィアに多額の借金を背負い、その借金を返すためにある研究の被験者になる道をとる。
そのアダムには、統合失調と診断され、入退院を繰り返している双子の兄ジャスパーがいて、内なる声に従って弟のアダムを救おうと行動する。
そして、もう一人主要な登場人物が、CIAの女性エージェント・ナヴァ。彼女は、ロシアの諜報機関で暗殺者として育てられた過去があり、今はCIAの中にいながら、アメリカの国家機密を海外の情報機関に売ることで金を稼いでいる。この武芸百般に通じて不死身のナヴァがなんとも魅力的だ。
この3人を軸に、確率論や脳科学などの理論や知見を横糸にして、未来予知に取り組むマッド・サイエンティスト達とアダムらの戦いが繰り広げられていく。時にアクション大作風、時に数学の教科書風、時にSF風、いろんなテイストでぐいぐい読ませるところは凄い。☆☆☆☆。