『神と人種』

 今回の通勤電車内読書は、マーク・A・ノール著「神と人種―アメリカ政治を動かすもの」(岩波書店)

岩波書店の単行本、しかも社会科学系の学術書なんて読んだの何十年ぶりにだろう?。実に珍しい選択なのだが、アメリカのミステリを読んでいると、人種や宗教の問題が意外に大きく影響していることに気付かされるので、一度きちんと学んでみようかと思ったのだ。

しかし、さすがに学術書は手強いね。特に、宗教(ここでは専らキリスト教)の宗派の違いなどについて全然知識がないので、その差異がわからないことが多々ある。
しかも、日本語訳がこなれていないので、文章のつながりに首をかしげたくなる所が多くて、スムーズに読み進めない。
しかし、巻末にかなりのページを割いてまとめられている訳者あとがきと訳者解説(合計で33ページもある)は、とてもわかりやすい。
訳者解説2「アメリカのキリスト教主要宗派の系譜」を読んで初めて、カトリックとプロテスタントの違い、バプテストが何か、メソジストが何か、それぞれの構成比がどのていどなのかなどが理解できた。
解説を先に読んでから本編を読む方が、理解は早いかもしれない。

それはそれとして本書で語られているのは、「アメリカの政治の多くは、何らかの形での白人の黒人に対する扱いの歴史であったし、人種差別の歴史の多くは、根底において宗教によって形成されてきた」ということに要約される。
自由と平等と共和の国アメリカにおいては、意外にも宗教が特段に重要な要素であり、その宗教の主流をなすのが、様々に細分化したアメリカ独自のキリスト教宗派であるということである。
そしてその宗教は、アメリカの政治に深く関与し、宗教戦争であった南北戦争以降、様々な場面で矛盾や二律背反、パラドックスを生みつつ現代に至っている。
アメリカもまた悩める国のようだ。

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