舞台は、1950年5月のニューヨーク。主人公は、ジョゼフィン(ジョー)・フラニガン。かつては麻薬中毒で、今は立ち直ってクスリを近寄せないようにしているものの、スリや盗品売買という軽犯罪で生計を立てなければならいほど最下層で暮らしている。
そんなジョーの元に、裕福な夫婦から麻薬中毒になった挙げ句に失踪した女子大生の娘ナディンを捜して欲しいという依頼が舞い込む。ジャンキーの行方は元ジャンキーが探すのが一番手っ取り早く確実だろうという訳だ。
法外な謝礼に惹かれたジョーは、ダンサーをしていたというナディンを探し始めるが、その行く先は、若い女性の転落の軌跡をたどって、次第に底辺へ底辺へと向かっていくことになる。
そして遭遇するナディンを食い物にしていた男の死と、警察によるジョーへの疑い。
ジョーを使って男を捜させ殺したのは誰なのか、謎解きは後半に加速し、最後に明らかになる真犯人の姿。結末は、暗く哀しい。
ニューヨークの裏社会を、転落から這い上がろうと懸命に生きるジョーの視点から活写しつつ、一度嵌ってしまうと抜け出せない蟻地獄のようなクスリの怖さを描く会心作ではあるが、読後感はなんともやるせない。☆☆☆1/2。