今回の通勤電車内読書は、マイクル・コナリー著「チェイシング・リリー」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。
マイクル・コナリーと言えば、ハード・ボイルドなミステリ作家で、刑事「ハリー・ボッシュ」シリーズで有名なのだが、本作はシリーズものではなく、単独作品。でも、刑事弁護士役で登場するジャニス・ラングワイザーは、「ハリー・ボッシュ」シリーズのひとつ「エンジェルズ・フライト」に登場するから、スピン・オフ作品と言えるかもしれない。
本書の主人公ヘンリー・ピアスは、若き天才科学者で、自ら立ち上げたベンチャー企業アメデオ・テクノロジーズの社長。分子コンピュータの開発に関する新たな特許の出願を目論んでおり、会社を維持し研究を進めるために大口の投資家による資金援助を得ようとしている。
そんな彼が、恋人と別れて引っ越した新しい家に引いた一本の電話にかかってきた、電話番号の前の持ち主リリーへの電話に興味をひかれ、売春婦らしきリリーを探そうとするところから物語が動き始める。
ヘンリーがリリーに興味を持つに至ったのは、子どもの時の彼自身の経験が大きく影響しており、彼の向こう見ずな行動は、彼自身と会社の存続をも危うくしかねない様相を呈し始める。
そして、最後の最後に自分をはめたのが誰だったかに気付き、事件の真相が明らかにされるのだが、最後の謎解きがあまりにも性急で強引な印象を受ける。
それに、主人公のヘンリーが基本的に良い子ちゃんなので、ハードボイルド的な面白みにかけるきらいがある。もっと破綻したかったダメ男の方が味が出て面白いのに。しかし、本筋のストーリー展開上仕方ない部分もあるが。
「ハードボイルドの旗手が放つクールでホットなサスペンス」という裏表紙カバーの惹句を信じて読むと期待はずれ。☆☆1/2