『ボディブロー』

 今回の通勤電車内読書は、マーク・ストレンジ著「ボディブロー」(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 主人公は、元ボクサーで今はバンクーバーにある高級ホテル「ロード・ダグラス・ホテル」の警備責任者をやっているジョゼフ(ジョー)・グランディ。
 彼の雇い主でホテルのオーナーであるレオ・アレクザンダーが、8年間のホテル内での隠遁生活に別れを告げ、ホテル経営者賞の受賞パーティーに出席した夜、レオの身の回りの世話をしていた専属ハウスキーパーのラケル・メンディスが、レオのペントハウスに忍び込んだ何者かに殺される。
 ジョーは、レオの指示で犯人の姿を追うのだが、そのうちにレオの周囲の複雑な人間関係が明らかになっていく。

 ジョーは、感情をあまり表に出さない、タフで穏やかな、どちらかというと地味な印象さえあるヒーローなのだが、その抑制されたキャラクターに加えて、ジャズや会話などの小道具によって、スタンダードで良質なハードボイルド・ミステリに仕上がっている。

 本作は、2010年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀ペイパーバック賞受賞作と言うことだが、著者のマーク・ストレンジにとって本作が2作目ということで、その実力はなかなかのもの。

 人によっては、多すぎる登場人物の書き分けができてなくてよくわからないと思う人もいるみたいだが、本書の前に同じくジョーを主人公とするSucker Punchという未訳の作品があり、ある程度そこで語られている部分は本作ではお約束として省かれているからではないかと思われる。

 私としては、特に戸惑うこともなく、楽しく読めた。☆☆☆☆1/2。

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