『ブルー・ヘヴン』

 今回の通勤電車内読書は、C・J・ボックス著「ブルー・ヘヴン」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。2009年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA, Mystery Writers of America)・エドガー賞長編賞の受賞作である。

 アイダホ賞北部、カナダとの国境に近い小さな町の森の中で、12歳の少女アニーと弟のウィリアムは、偶然にもロサンゼルス市警を退職してこの町に移り住んだ4人組による殺人を目撃する。
 目撃したことを知られ、その場から必死で逃げ出す二人と、彼らを追う犯人達。犯罪捜査の経験豊富な犯人達は、町の保安官にうまく取り入り、行方不明になったアニー達の捜索本部に加わって、捜索隊の動きをコントロールするとともに、二人の母親モニカの元で網を張る。
 アニーとウィリアムは、犯人達の意図を察し、誰にも連絡できない状況の中、破産寸前のジェス・ロウリンズが経営する牧場に逃げ込み、ジェスに匿われることになる。
 一方、ロサンゼルス郊外の小さな町の警察署を退職したばかりの元刑事エデュアルド・ヴィアトロが、地元の競馬場で8年前に起きた強盗殺人事件の真相を追って、この町にやって来ていた。
 過去と現在の二つの事件が重なる所で全容が明らかになり、全てを闇に葬り去ろうとする犯人達と、幼い姉弟とその母親を守ろうとするジェスとの対決の時が訪れる。

 500ページを超える長編だが、人物造形が見事で、一気に読ませる筆力もなかなかのもの。
 特に、自分の身は自分で守るという西部の伝統を老牧場主に体現させ、悪徳警官から弱き者を守るというストーリーは、いかにもアメリカ人好みだし、本作の映画化権が売れているというのもむべなるかなと思う。
 ハリソン・フォードとかトミー・リー・ジョーンズあたりが主演で映画化されると良さそうだが、ハリソン・フォードだと「刑事ジョン・ブック 目撃者」を彷彿とさせるな。

 個人的にはエンディングがちょっと気に入らないのだが、ストレートで心温まるミステリとして、お薦めの1冊である。☆☆☆☆1/2。

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