『贋作に明日はない』

 今回の通勤電車内読書は、前回の続編、ヘイリー・リンド著「贋作に明日はない」(創元推理文庫)

 前作にも登場したアンソニー・ブラジルが開いた高級画廊のオープニングパーティーに出かけた主人公のアニーは、そこで木からぶら下がる彫刻家シェーマス・マグローの死体を発見する。
 アニーは、そのパーティーの場でとある富豪夫人から、彫刻家ロバート・パスカルが修復のために持ち去った『頭と胴』という作品を取り返すように依頼を受ける。
 なんとかパスカルとコンタクトを取ろうとするアニーだが、その前に母親のベヴァリーが現れ、パスカルには近づかないようにとの忠告を残すが、その母の周囲には怪しげな男達がうろついている。
 母の心配をしつつも、無謀さを顧みずあちこちに探りを入れるアニーだったが、ベヴァリーの青春時代の意外なロマンスとともに、マグローとパスカルの関係、そしてパスカルの関わる犯罪の姿が明らかになっていく。

 サンフランシスコのポップなテイストの中に、殺人事件の謎解きと平行して、スリリングで時に無謀なアニーの活躍、アニーのスタジオの大家フランク・デベントンと祖父ジョルジュ・ルフルールとも知り合いらしい絵画泥棒のマイケル・X・ジョンソンとアニーを巡るロマンスなどが散りばめられ、軽快に読める作品に仕上がっている。☆☆☆☆。

 本国では既に4作目も刊行されているというこのシリーズ、訳者あとがきでは、3作目の翻訳が進行中とのことで、今後も刊行が楽しみである。

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