久しぶりの読書記録だ。
テゲツー!ライブラリの関係で書棚を整理していたら、積ん読になっていた、小林弘人著『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』(PHP新書)が見つかったので、宮城県出張のお供に持って行って読んだ。
初版は2014年4月1日だから、1年半近く前。ドッグイヤーとも言われるネットの世界では風化も激しいのだが、まだ鮮度は保たれていたのは幸い。
日本でインターネットの商用サービスが始まってから20年余。著者の小林氏は、株式会社インフォバーンの代表取締役CEOで、1994年に『ワイアード』日本版(懐かしい!)を創刊するなど、その黎明期からインターネット上のサービスを見続けてきている。
その著者が本書語るのは、「ウェブ」の過去と現在と未来。
インターネットの歴史の中で、その初期から使われている「ウェブ」という言葉は、何故か日本では一般的に理解されてるとは言いがたいが、幅広い読者層を想定するPHP新書というビジネス書において、「インターネット」でも「ICT」でも「ホームページ」でもなく、「ウェブ」へこだわることは、日本での商用インターネットサービスをその黎明期から割と積極的に使ってきた者のひとりとしてよく理解できる。
世界中に広がる情報ネットワークによって人々が繋がることの意味は、単にその上で展開されるサービスを使うということではなく、そのネットワークを通して自らの知識や体験をオープンにし、他の人々とシェアすることによって、新たな価値やサービスを生み出すこと、人間の力を向上させることにある。
そしてそれは、ネット上の世界だけではなくて、リアルな場(現実世界)においても同じだというのが著者から受け取ったメッセージだ。
組織の中で、個々が持つ情報をオープンにし、それをシェアするという「ウェブ的」な考え方、それを現実のものとする行為が、その組織を、ひいては社会全体を更に発展させる。
これは、自分自身がこれまでインターネットとの関わりの中で実感し、どちらかというとレイトマジョリティな組織に属しつつ、微力ながらも実践し続けようとしていることに通じるので、大いに共感できる。
「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」という書名は、明確に著者のメッセージを伝えている。
「ウェブ2.0」以降、人間中心主義に移行しているテクノロジーとネットワークは、既に我々の生活と切り離せないものになっている。その中で、テクノロジーへの理解や知識がなくとも、オープンとシェアという「ウェブ的思考」をリアルな社会に持ち込むことは、これからの社会を生きる上で不可欠のものとなるだろう。
我が後輩達にも読んで欲しい良書として、テゲツー!ライブラリに寄贈することにしよう。